CASE12
若草山や奈良市街までを一望できる切り立った高台に建つY邸のファサードは、青い空に映えるシンプルながらも黒の塀と白の建物のコントラストが印象的。塀の中に入ると、建物が水盤のある庭をL型に囲うように配置されています。夜になると美しい夜景を部屋の中から見ることができる上、照明を配した水盤の波紋が部屋の内部にまで映り込んで、穏やかな気持ちになれるそう。
施主のYさまが望まれたのは「生活臭が出ないリゾート風のスペース」。多くのお客さまをお招きすることの多いYさまですが、このY邸の大きな多目的ホールはパーテイーやホームコンサートなどで大活躍だったとか。「音響効果もいいし、2階に配置されたコの字型の回廊や階段など、どこにいても演奏を楽しむことができますから」。この大箱空間である多目的ホールは、南向きのガラス面の向こうに広がる美しい風景を眺めるだけでも、穏やかな気持ちになる非日常的な空間となっています。またガス温水床暖房が設置され、大箱空間ながら冬も暖かく過ごすことができます。
洗面からつづく浴室はガラス張りでとても開放的。浴室から直接テラスに出ることができるので、夏にはのんびりと湯船に入った後に外に出て、美しい夜景を眺めることもあるそう。浴室のフロアにはガス温水床暖房が設置されているので、冬でも足下から暖かいバスタイムを満喫することができます。また多くのお客さまが訪れるため、プライベートスペースである浴室は、リビング・ダイニングから距離をもたせるため、長い廊下の奥に配置されています。
「実家が純和風の日本家屋で、和室の両側に廊下があって空間にゆとりがあったので、それを取り入れたかった」と話すYさま。この住まいにも和のエッセンスを取り入れたかったと言います。ダイニングから長い廊下の先にある、雪見障子で和庭園を眺められる茶室は、まさにそのイメージ通りの空間。Yさまが望んだ「和のゆとり」を実現したスペースとなっています。
1966年兵庫県西宮市生まれ。1989年京都工芸繊維大学工芸学部建築学科卒業。建築会社設計部を経て、2001年藤井学建築工房を設立。2011年よりGAK建築工房に改称。