CASE38
古き良き日本情緒溢れる住宅地の一角に建つ「秦町の甍(いらか)」は、美しい日本庭園のある住まい。「すべての部屋から庭を眺めることができるように」という施主さまの要望をかなえた純和風の住まいは、その名の通り、周辺の景観に調和した瓦屋根をもつ邸宅となっています。
この住まいの特徴のひとつとしてあげられるのが、「取次」のある玄関エントランス。お客さまを出迎えるこのスペースでは、玄関に床暖ベンチも備えられ、腰を下ろして会話を愉しめるほか、訪れる人の用件にあわせて、臨機応変に対応出来るように配慮されたものとなっています。礼節を重んじる施主さまの思いを具現化し、「おもてなしの心」を再現した心和む空間となっています。
への字型に折れ曲がったリビング・ダイニングの南棟は、西側にある柿の木を残すために配慮されたもの。その結果として、庭を取り囲むようなカタチとなり、より美しい眺めを愉しむことができるようになったのだそう。室内からの景観を損なわないため、欄間や柱はできるだけ細くなるように考慮され、欄間のガラスによって舟底天井から庇につながる一体感が、住まいと庭のつながりをより強調するものとなっています。
吹抜けのある階段スペースの壁面上部の開口は、光を取り入れながらも、西側に位置するその条件から光が入りすぎないように格子が設けられています。そのため格子を通り抜けた光は、時間や季節によって織りなす陰影が刻々と変化し、壁面を表情豊かに演出しています。
1946年京都府生まれ。1964年京都市立伏見工業高校建築科卒業。美建設計事務所にて勤務後、1975年一級建築士 安原三郎建築設計事務所設立。一級建築士。