不動産の売却には税金がかかる!知っておきたい税金の種類と節税の方法
監修者:宅地建物取引士 永見薫
編集者:【大阪ガス】Daigasコラム編集部
自宅や土地を売却するときには、税金がかかります。どんな税金が、いつ、いくらかかるのか、不安に感じている人も少なくありません。また、思いの外早く成約し、売却後の手続きや納税の準備を急いで進めなければならないこともあります。そのときに慌てないようにするためにしっかり準備しておきましょう。
「スムーズに安心して売却したい」そんな人のために、今回は家や土地などを売却するために必要な税金について解説していきます。
目次
不動産売却で発生する税金は主に2種類
不動産を売却するときには、大きく分けると「売却時にかかる税金」と「売却による利益にかかる税金」の2種類があります。この2種類について詳しく説明していきます。
売却時にかかる税金
売買契約の締結や登記手続きなど、不動産の売却をおこなうタイミングで発生する税金です。具体的には以下のとおりになります。
・印紙税:契約書など、課税文書に対して課される税金
・登録免許税:登記手続きの際に必要な税金
・消費税:仲介手数料を支払う際にかかる税金
印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書をはじめとした「課税文書」と呼ばれる書面に課される税金のことです。書面に収入印紙をはり、消印をすることで納税したと見なされます。印紙税額は書面に記載された契約金額によって決められています。
印紙税は国税の一種であり、売買契約書を作成するときに、契約金額に応じて定められた金額の収入印紙を契約書に貼付し、消印をおこなうことで納付しなければなりません。収入印紙については、郵便局や法務局、コンビニエンスストアなどで購入することが可能です。
印紙税は、買主と売主のどちらか一方が負担してもかまいませんが、実務上は契約書を2通作成し、それぞれが1通ずつ保管する場合が多いため、双方で印紙税を負担するケースが一般的です。
売買契約書に印紙が貼付されていない場合、税務調査で過怠税が課されることもあるため注意が必要です。
不動産の売買契約で、書面に記載された契約金額にともなう印紙税の税額については、下表のとおりです。

出典:国税庁ホームページ 印紙税額一覧表(令和6年11月18日以降適用分)をもとに作成
ただし、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間、不動産の譲渡に関しては印紙税の軽減措置がされており、以下のような金額設定です。

出典:国税庁ホームページ 印紙税額一覧表(令和6年11月18日以降適用分)をもとに作成
措置状況は変動する可能性があることから、国税庁のホームページにて確認することがおすすめです。
なお売買契約書を電子契約として締結する場合には、印紙税の課税文書には該当しないため、印紙を貼付する必要はありません。不動産の売却にあたって、不動産会社に仲介を依頼する際に締結する「媒介契約書」についても、印紙税法上の課税文書にはあたらないため、収入印紙は不要です。あくまで物理的に書面として存在する「売買契約書」のみに課税されます。
登録免許税
不動産を売却する場合には登記手続きが必要です。その際に納める税金が登録免許税です。課税対象は土地と建物になります。金額は課税標準額×税率にて算出されます。登記申請時に収入印紙を貼付することで納税したとみなされます。
これらの手続きは司法書士が担当しており、各種書類の取得や登録手続きを登記する本人に代わっておこないます。ここまでの過程で発生する登録免許税・証明書の取得費用・司法書士費用の3つを売主は司法書士に支払うことになります。
消費税
不動産売却の際、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的ですが、売買が成立した際に不動産会社に成功報酬として支払う仲介手数料には、消費税がかかります。
仲介手数料は一般的に売買価格に応じて金額が大きくなるため、それにともなって消費税の金額も大きくなっていきます。仲介手数料の上限額は法律で決められており、売却価格が400万円を超える場合は、以下の計算式で求められます。
消費税の仕組み
仲介手数料=売買価格×3%+6万円+消費税
3%+6万円の部分が仲介手数料であり、その金額の10%の消費税も必要となるため注意しましょう。
売却による利益にかかる税金
不動産を売却したことで発生する「利益」には税金が課されます。これを譲渡所得税といいます。譲渡所得税は以下の3つに分けられています。
・所得税:収入を得た場合に課される税金。
・住民税:所得に対して課される地方税で、居住する都道府県や市区町村に納める。
・復興特別所得税:東日本大震災の復興を目的とした税金で、2037年までの支払いが義務付けられています。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得税の計算では、まず譲渡所得の金額を計算します。不動産の売却金額から、その不動産を取得・譲渡するためにかかった費用と、売却時に利用できる控除額を引き算して算出します。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得=不動産の売却代金 −(取得費+譲渡費用)
取得費は、売却した不動産を取得したときにかかった購入代金などの費用です。譲渡費用は、不動産の売却時に支払った費用のことです。
譲渡所得にかかる税金は、売却した不動産の所有期間のほか、自己居住用か否かといった用途によっても税率が大きく変わります。特に不動産の譲渡によって利益が発生する場合、その金額が大きいため、かかる税率の違いで支払う税額の差が大きくあらわれます。
なお土地や建物を売却した場合の譲渡所得については、その物件の1月1日時点における所有期間が5年を超えるかによって、下表のように所得税や住民税の税率が異なります。
|
売却物件の所有期間 |
所得税 |
復興特別所得税 |
住民税 |
合計 |
|
5年以内(短期譲渡所得) |
30% |
0.63% |
9% |
39.63% |
|
5年超(長期譲渡所得) |
15% |
0.315% |
5% |
20.315% |
譲渡所得で知っておくべきこと
譲渡所得で知っておきたいことをまとめました。自分の売却事例の場合にあてはまるかどうかを確認してみましょう。
・課税所得や所有期間によって、譲渡所得税が高額になることがある。
・売却して得た金額から、取得費や譲渡費用を差し引いた額(譲渡所得額)が0またはマイナスの場合、 特別控除を適用して売却益が0になる場合は譲渡所得税がかからない。
・譲渡所得で利益が発生した場合、確定申告をして税金の納税が必要。
・譲渡所得において損益が発生した場合、確定申告が不要。
・控除の特例を利用して譲渡所得が0円になる場合は、確定申告が必要。
確定申告については、のちほど解説をしていきます。
譲渡所得で損失が出た場合
売却して得た金額から課税所得を計算して損失が出た場合は、その損失の金額をほかの土地や建物の譲渡所得の金額から控除できます。ただしその控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、損益通算することはできません。
また売却した不動産が長期譲渡所得に該当するマイホームの場合、要件を満たすと不動産以外の所得(給与所得など)との損益通算ができます。そして損益通算をしても損失を控除しきれない場合は、売却の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除が可能です。
譲渡損失が出た場合は原則として確定申告は不要ですが、損益通算や繰越控除を利用する場合は、確定申告が必要になるため注意しましょう。
不動産売却で利用できる節税制度
不動産の売却で利益(譲渡所得)が出ると、譲渡所得税がかかります。しかし、下記のようなケースでは特例や控除で節税になることがあります。それらについてご紹介していきます。
・居住用財産の3000万円特別控除
・所有期間10年超のマイホーム売却時の軽減税率の特例
・空き家の譲渡所得3000万円控除
・取得費加算の特例
・特定の居住用財産(マイホーム)の買い換え特例
居住用財産の3000万円特別控除
居住用財産(マイホーム)を売却した際に発生した譲渡所得から最大で3000万円を控除できる制度です。譲渡所得税は特別控除後の譲渡所得に課税されるため、特例を使うことで払う税額は少なくなります。譲渡所得が3000万円以下なら税金はかかりません。
なお3000万円特別控除は、居住を目的とした不動産の売却の場合に適用されます。別荘や事務所として使用するほか、賃貸住宅として貸し出している不動産、住まなくなってから3年目の年末を経過した土地や、もともと居住の用に供していない土地のみの売却の際は適用外になるため注意しましょう。
所有期間10年超のマイホーム売却時の軽減税率の特例
マイホーム(居住用財産)を売った際に、一定の要件にあてはまる場合は、長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算する、軽減税率の特例の適用を受けることができます。これを「軽減税率の特例」といいます。
軽減税率の特例の適用を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
- 現在住んでいる自宅とその敷地を売ること
- 対象が以前に住んでいた家屋や敷地の場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 住んでいた家屋や住まなくなった家屋を取り壊した場合、次の要件にあてはまること
・敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
・家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。 - 確定申告をすること。
- 売った年の1月1日で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
- 売った年の前年、前々年にこの特例の適用を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地について、買い換えや交換など、ほかの特例の適用を受けていないこと。ただし、3,000万円の特別控除の特例との併用は可能。
- 入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできない。
- 親子や夫婦など、特別な関係がある人に対して売ったものではないこと。特別な関係がある人とは、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる。
軽減税率は、以下のとおりです。長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率にすることができます。
|
譲渡所得金額 |
所得税 |
住民税 |
合計税率 |
|
6,000万円以下 |
10.21% |
4% |
14.21% |
|
6,000万円超 |
15.315% |
5% |
20.315% |
※2013年から2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて申告・納付することになります。
空き家の譲渡所得3000万円控除
自宅ではなく、相続した実家(空き家)を売却して譲渡所得が発生した場合、要件を満たせば譲渡所得から3000万円まで控除を受けることができる特例です。
この特例を受けるためには、下記のような要件が必要です。
・相続した日から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること。
・2016年4月1日〜2027年12月31日の期間に譲渡すること。
・相続した家屋の場合、相続の開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていたものであること。
・相続した家屋の場合、相続の開始の直前において、当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること。
・家屋を譲渡する場合(その敷地等もあわせて譲渡する場合も含む)現行の耐震基準に適合するものであること。
・売却代金が1億円以下であること。
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続した不動産(土地や建物)を相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、相続税額の一部を売却した不動産の取得費に加算できる特例です。
特例を適用して売却した不動産の取得費を高くすることで譲渡所得を減らし、結果的に譲渡所得税の節税になるという仕組みになっています。
相続税が多いケース、また相続財産価額のなかで売却する不動産の割合が多いケースほど、譲渡所得税が節税できる額が大きくなるため、「相続する財産が土地のみで相続税額が高い」という方には恩恵が大きくなります。
特定の居住用財産(マイホーム)の買い換え特例
マイホーム(居住用財産)を買い換えた場合には、税金の負担を一時的に軽減させる特例です。
具体的には、マイホーム(居住用財産)の買い換えによって生じた譲渡所得に対する課税を、次にマイホームを売却するときまで繰り延べできます。課税される税金が免除されるよりは先送りするという形ですが、買い換え時に税金が課されないという点は大きなメリットです。
複数特例の併用可否
不動産の売却で利益が出た場合に利用できる特例や控除が併用できるのかは、特例によって異なります。ここでは3つの特例がそれぞれ併用できるかどうかを一覧にまとめました。
|
|
3000万円特別控除 |
軽減税率の特例 |
特定の居住用財産の買換え特例 |
|
3000万円特別控除 |
ー |
併用可能 |
併用不可 |
|
軽減税率の特例 |
併用可能 |
ー |
併用不可 |
|
特定の居住用財産の 買換え特例 |
併用不可 |
併用不可 |
ー |
3000万円特別控除と軽減税率の特例は併用できますが、特定の居住用財産の買換え特例は軽減税率の特例や3000万円特別控除とは併用できません。また、3000万円特別控除、軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え特例は、どれも住宅ローン控除と併用ができません。
どの特例や控除を選べば節税効果が大きくなるのかは、売主によって異なります。判断が難しい場合は税理士などの専門家に相談してください。
不動産売却にかかる税金で損しないためのポイント
ここまで不動産の売却にかかる税金について説明してきました。では、売却時の税金で損をしないためには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。ポイントを3つにまとめました。
事前に税金シミュレーションする
前項までの各種税金の項目で示した税金の額を計算し、あらかじめシミュレーションをしておくことが大事です。難しい、よくわからないと感じるときには、税金の専門家である税理士に相談してみることをおすすめします。
専門家に相談するタイミングを見極める
税金に関する相談をする場合は、不動産会社ではなく税理士に相談をしましょう。できれば不動産会社や司法書士との連携が取れているほうが望ましいです。売却から登記・税務申告までをワンストップで支援してもらえます。
ただし、必ずしも専門家への相談が必要というわけではありません。税理士に相談が必要なのは、譲渡益が発生する場合と、売却する不動産が相続用不動産である場合です。相談する際には、売却活動が始まる前にしましょう。売却後に相談すると節税制度が利用できない場合もあります。
また税理士を選ぶ場合、不動産分野に強い税理士を選びましょう。税理士にも得意分野があります。過去にどのような不動産売却案件を担当してきたかを、事前に確認しておくと安心です。
確定申告や書類準備の流れを押さえる
不動産売却の確定申告では、さまざまな書類の準備が必要です。具体的には以下の書類が必要となります。
・確定申告書第一表・第二表
・確定申告書第三表(分離課税用)
・購入時・売却時の売買契約書(写し)
・譲渡所得の内訳書
・取得費・譲渡費用を確認できる書類(不動産の購入代金・購入時の仲介手数料・印紙税・登記費用・不動産取得税・購入後にかかったリフォーム費用など)
これらの書類をもとに確定申告を進めていきます。確定申告は以下の流れで進んでいきます。
【確定申告の流れ】
- ・確定申告の必要書類を準備する
上記で解説した確定申告に必要な書類を準備しましょう。 - ・譲渡所得の内訳書を作成する
次に譲渡所得の内訳書を作成します。売却した物件の情報や、購入時の情報、取得費や譲渡費用などを記載して譲渡所得の金額を計算します。3000万円特別控除などの特例を適用する場合は、その旨も忘れずに記載します。 - ・確定申告書を作成する
確定申告書第一表・第二表を作成します。そのほか、譲渡所得の内訳書をもとに確定申告書第三表を作成します。税理士に相談するようにしましょう。 - ・申告書を税務署へ提出
作成した確定申告書と添付する書類は、管轄の税務署に提出します。申告期限は例年3月15日となります(3月15日が土日祝日の場合、その翌平日が期限)。 - ・納税または税金の還付を受ける
譲渡所得税が発生する場合は、申告期間内に納税をすませる必要があります。納税方法は税務署や金融機関の窓口での現金納付、コンビニエンスストアでの納付、インターネットバンキングによる電子納税、振替納税などがあります。
一方、特例の適用などで税金が還付される場合は、確定申告からおよそ1ヶ月から1ヶ月半程度で、指定した金融機関の口座に還付金が振り込まれます。
まとめ
不動産売却時の税金は複雑で難しいものです。譲渡所得税はもとより、特に税金を軽減する特例は種類も複数あり、どの特例に属しているかをまず考える必要があります。ただしこれらを理解していると、売却がよりスムーズに進むこと、そして想定よりも費用がかからずにすむ可能性もあります。そのためぜひ事前に理解を深めておきましょう。
本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がございます。本記事に含まれる情報のご利用は、お客さまご自身の責任において行ってください。詳しくは「サイトポリシー」をご確認ください。


















